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スポーツや交通事故などで膝に強い力がかかり、膝靭帯が裂けたり傷ついたりすることを「膝靭帯損傷」と呼びます。
膝関節には前後左右に4本の靭帯があり、前側にある靭帯を損傷すると「前十字(ぜんじゅうじ)靭帯断裂(損傷)」、後ろ側にある靭帯を損傷すると「後十字靭帯断裂(損傷)」という疾患名になります。
どちらも主な症状は、膝の強い痛み・腫れです。急性期(受傷から約3週間)を過ぎると、徐々に痛み・腫れなどは軽減していきますが、膝の不安定感が目立ってくることがあります。膝の不安定さを放置すると、半月板や軟骨にも損傷が起こり、痛みの慢性化・腫れに繋がります。スポーツ活動や日常生活に支障を来す可能性があるため、しっかり治療しましょう。お気軽に当院までご相談ください。
膝関節は、大腿骨(太ももの骨)・脛骨(けいこつ:すねの骨)・膝蓋骨(しつがいこつ:膝のお皿)の3つの骨から構成されており、さらに大腿骨と脛骨の安定性を保つために、前後左右に4つの靭帯で繋がっています。
膝関節に外から強い力が加わると、外力の方向に応じて、それぞれの靭帯に損傷が生じます。
膝の靭帯損傷の中では発生頻度が高い外傷で、スポーツ選手の受傷が多いので、名前を耳にしたことがある方も多いのではないでしょう。
前十字靭帯損傷は自然治癒が難しく、膝の不安定さが永続的に残るため、スポーツ復帰を目標とする場合には外科的手術が必要となるケースが多いです。
前十字靭帯断裂・損傷の主な原因は「スポーツ・運動中の怪我(外傷)」で、スポーツ外傷の約20%を占めます。
スポーツでの受傷原因は、大きく2つに分けられます。
後十字靭帯断裂・損傷は、前十字靭帯損傷と比べて1/6~1/7程度の発症頻度で、完全に切れる断裂よりも部分的に損傷することが多いのが特徴です。
また、症状が改善しても、その後の日常生活の中で後十字靭帯に緩みが生じやすい傾向があります。膝の違和感の残存、二次的に半月板や大腿骨軟骨の損傷が起こるケースがあり、変形性膝関節症に繋がる可能性が報告されています。
なお、後十字靭帯損傷では、前十字靭帯断裂・損傷で見られた「膝の不安定感」が少なく、軽症の場合には比較的早期に回復するため、治療に繋がらないケースも少なくありません。
一方で、後十字靭帯損傷時に他の靭帯や半月板を同時に損傷したケースでは、足を踏み出すときに違和感があるような「膝の不安定感」がみられたり、ガクッと膝の力が抜ける「膝崩れ」が起こったりするケースもあります。
後十字靭帯断裂・損傷の発症原因は、膝前方を強打することであり、次のような要因で起こります。
問診や触診(徒手検査)、X線検査・超音波検査などの画像検査から、前(後)十字靭帯の断裂・損傷を推測することは可能ですが、靭帯の状態を詳しく確認するためにはMRI検査が必要となります。
自覚症状・発症時の様子などについて、詳しく伺います。
また、触診では関節内の腫脹(腫れ)や、靭帯の緩みの程度を調べるテスト(ラックマンテストなど)を行います。
X線検査は骨折の有無を調べるために実施しますが、靭帯はX線に写らないため確定診断はできません。
超音波検査は、レントゲン写真ではうつらない筋肉・腱・靭帯の損傷、内出血、軟骨、軟部腫瘍等の抽出に優れており、組織の炎症や癒着が観察できます。また、MRI検査では評価できない、関節などを動かしながらの検査が可能なので、組織の動的な評価が行えます。
自覚症状の問診など診察から、「前十字(後十字)靭帯断裂(損傷)」が疑われた場合、通常MRI検査を行います。MRI検査では、前十字・後十字以外の靭帯や、半月板損傷・関節軟骨の状態も詳しく確認できるため、前十字(後十字)靭帯断裂(損傷)の確定診断が可能です(診断率は80%~90%)。
※MRI検査を実施する場合、対応可能な提携施設などにご紹介させていただきます。
前十字靭帯および後十字靭帯の断裂・損傷では、損傷部位や状態によって、第一選択となる治療法が異なります。手術を選択した場合でも、医師の指示のもと理学療法士と共に行う「リハビリテーション治療」を実施していく必要があります。
患部の出血・腫れ・痛みを防ぐことを目的に、応急処置の基本「RICE処置」を行います。
*1挙上:心臓よりも高い位置に上げること
前十字靭帯は血流が乏しく、自然治癒は困難とされている部位なので、保存的治療(手術以外の治療法)での靭帯の修復は難しいとされています。また、膝の安定性が失われていることが多いため、通常は「外科的手術による靭帯の再建」を第一選択とします。
手術では関節鏡を用いながら、ご自身の腱(自家組織)を使って靭帯を再建します。
現在広く行われている再建手術には、いくつかの術式があるため、患者様の年齢や競技特性などを考慮し、患者様とよく話し合った上で選択します。
※検査・診断の結果、手術が必要と判断された場合には、近隣の対応病院をご紹介させていただきます。
※「膝のリハビリページ」にリンクする(要確認)
後十字靱帯の単独断裂・損傷では、若干膝の緩みが残ることがありますが、日常生活においてはほとんど支障を来さないため、まずは「保存的治療」を試みます。
ただし、膝の不安定さや痛みが残る場合には、前十字靱帯損傷同様に「再建手術」を検討します。
※「膝のリハビリページ」にリンクする(要確認)
※「前十字靭帯損傷の治療法」の項目にリンクする。(要確認)
前十字靭帯損傷であっても、日常生活に支障がなく、競技スポーツに復帰しないような場合には、手術は必須ではありません。
ただし、靭帯が損傷したままで長時間過ごすと、徐々に膝のぐらつきや摩耗などがみられます。膝崩れを繰り返すと膝機能が悪化して、将来的に半月板損傷や変形性膝関節症に進行してしまうことが多いため、競技スポーツをしない方でも、靭帯再建手術で治療した方が結果的に良いと考えられています。
手術後、2週間程度で松葉杖なしで歩けるようになるケースが多いですが、その後はリハビリテーションによって可動域の改善や筋力の回復などに努める必要があります。
患者様の年齢や競技スポーツの内容、断裂状況などによって個人差がありますが、ジョギング程度の軽い運動なら術後4か月頃から可能です。その後、競技特性に合わせたリハビリを続け、平均して術後約6か月~9か月を目安にスポーツ復帰を目指します。
突発的に起こる交通事故の回避は難しく、スポーツ中の怪我も完全に予防することはできません。
しかし、日頃から膝関節の安定化を意識して、ストレッチなどで「太ももの筋力強化」に努めると、膝の靭帯損傷リスクの低下に繋がります。また、スポーツでは膝周りの筋肉だけでなく、体幹も膝の靭帯損傷の発症に大きな影響を与えているため、「全身の柔軟性の改善・向上」を図ることが大切です。
プール内歩行は、膝への負担を抑えながら、効率よく全身の筋力が鍛えられるので、おすすめです。
※前十字(後十字)靭帯の損傷がある場合、ストレッチや運動は、医師・理学療法士の指導のもと行いましょう。
前十字靭帯および後十字靭帯の損傷の多くは、スポーツ中に発生します。
膝の靭帯は膝関節を支える働きをしているため、損傷を受けると、膝の不安定性や膝崩れが生じて、日常生活・スポーツ活動に支障を来します。
また、長期間損傷したままで過ごすと、他の靭帯や半月板・関節軟骨など二次的損傷を生み、歩行困難・寝たきりの要因となる「変形性膝関節症」に移行する可能性が報告されていますので、きちんと治療することが望まれます。
当院では、医師と理学療法士が連携しながら、リハビリテーション治療によって再発や新たな部位の痛みの発生を予防する「積極的保存療法」に力を入れています。
「膝を強打した」「膝関節に強い痛みや腫れがある」という場合は、一度当院までご相談ください。