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「肩こり」でお悩みの方は多いですよね。厚生労働省による「国民生活基礎調査(2019年)」*1の中で、肩こりは女性が訴える自覚症状の第1位、男性では第2位と報告されています。直近20年を見てみても、常にベスト3に入っており、まさに「国民病」のひとつです。
*1(参考)令和元年(2019年)国民生活基礎調査の概況|厚生労働省
上記に当てはまる方は、お気軽に当院までご相談ください。
当院では医師と理学療法士が連携しながら、肩こり症状の改善だけでなく、再発防止を見据えた治療に取り組んでおります。
肩こりは「病名」ではなく、首の付け根から肩~腕~背中にかけて痛みなどの症状が起こる「症候群」です。
肩こりの痛みは「凝った(こった)」「張っている」「重苦しい」と表現されることがあり、痛みに伴って、吐き気や頭痛を感じる方もいらっしゃいます。
また、症状は主に僧帽筋(そうぼうきん)という首の後ろから肩・背中にかけて広がる筋肉を中心に幅広くみられます。
近年、IT技術の進歩は目覚ましく、老若男女問わず、ほとんどの方が日々パソコンやスマートフォンを使って生活をしています。そんな中、「姿勢」「動作」「身体の歪み(ゆがみ)」によって、首の痛みや肩こりに悩まされている方が、爆発的に増えています。
実は「肩こり」と言っても、原因から大きく2つに分けられます。
肩こりの原因となる疾患がある場合を医学的に「症候性肩こり」と呼びます。
「症候性肩こり」を引き起こす主な原因疾患には、次のようなものがあります。
首・肩・腕に痛み・こりなどの筋肉疲労(肩こり症状)が現れる病気のうち、原因が特定できないものの総称です。男性と比べて、女性に多くみられ、若年層でも発症します。X線検査では、多くの方にストレートネック(頚椎の生理的なカーブがない状態)や前方頭位姿勢(頭が前に出ている姿勢)が認められます。悪化すると、頚椎後弯(頚椎が後ろに曲がった状態)や椎間板腔の狭小化がみられ、「頚椎椎間板ヘルニア」「頚椎症」など別の疾患に移行してしまう可能性もあるため、早期受診・早期治療開始が望まれます。
首から肩にかけて筋肉や筋膜(僧帽筋・肩甲挙筋など)の痛み・こりなど筋肉疲労
パソコン作業・スマホ操作などによる上半身の筋肉疲労の蓄積など
原因に繋がる環境の見直しや作業制限を第一に行うと共に、筋緊張を和らげるための薬物療法(薬・ブロック注射など)、リハビリテーション(姿勢指導、首・肩へのストレッチ、頚椎カラーなどの装具療法)といった保存的治療を積極的に併用します。
首の骨は「頚椎(けいつい)」と呼ばれ、7つの骨から構成されています。それぞれの骨と骨の間には、水分が多くクッションの役割を果たす「椎間板」があります。椎間板の中心部はゲル状の「髄核(ずいかく)」、外周には強固な軟骨「線維輪(せんいりん)」があり、二重構造で脊柱(せきちゅう=背骨)を支えています。通常、頚椎は全体的にやや前方に緩やかなカーブの形状をしており、頚椎にかかる負荷を分散させています。
少しずつ椎間板の水分が減少して変性を起こすことで、クッション機能が失われる病気です。頭を斜め後ろに倒した状態で下に押すと、首から手に痛み・しびれが現れたり、首を前後左右に曲げる・ひねると痛みが強くなったりする傾向があります。多くの患者様で、頚椎に緩やかなカーブのない「ストレートネック」が認められています。
首や肩甲骨周囲、肩回りの痛み・こり、首を動かしにくい、
加齢や外傷による椎間板の変性、ストレートネック、不良姿勢(猫背など)
ストレートネックの主な原因は、スマホ操作・パソコン作業でのうつむき姿勢・猫背といった「不良姿勢」です。猫背になると頚椎が前方に傾きますが、前を向くために顎(あご)を上げると椎間板の後方が押し潰れる形となり、首の痛みに繋がります。一方、ストレートネックではない方でも、首に負担のかかる姿勢・動作を長時間行ったり繰り返したりすることで発症に繋がります。
薬物療法・注射療法による筋緊張コントロール、リハビリテーション(ストレッチ、運動療法、物理療法、自己管理指導)
頚椎椎間板症の悪化により、椎間板の中央のゼリー状組織が外に飛び出すことで、神経が圧迫される病気です。30代~50代の男性に多くみられます。首を後ろや斜め後ろに反らすと、痛み・しびれが増す特徴があります。
X線検査では頚椎椎間板症による椎間板腔の狭小化を認める場合もありますが、椎間板ヘルニアの確定診断には、MRI検査が必要となります。
発症予防や症状を悪化させないためには、正しい姿勢を意識することが大切です。
首・肩・腕の痛み・こり、首を動かしにくい、しびれ、脱力感、首から手にかけての放散痛など
※圧迫される神経の部位(脊髄/神経根)によって、症状に違いがあります。
頚椎椎間板の変性による神経の圧迫
椎間板の変性が起こる原因は主に加齢ですが、首に負担のかかる姿勢での作業・スポーツなども発症のきっかけとなります。
薬物療法・注射療法による筋緊張コントロール、リハビリテーション(ストレッチ、運動療法、物理療法、自己管理指導
頚椎症性脊髄症および頚椎症性神経根症は中高年に多くみられ、首を後ろに反らせると痛みが強くなる傾向があります。
「頚椎症」とは、加齢や繰り返される頚椎への負担から骨棘(こっきょく:骨のとげ)や椎間板の隆起などの変形が起こることです。頚椎には「脊柱管(せきちゅうかん)」という神経のトンネルがあり、中を通る「脊髄」と、その左右に枝分かれする「神経根」があります。頚椎症が原因となり、圧迫される神経によって「脊髄症」「神経根症」に分類され、症状が出現する範囲などが異なります。
重症化すると、歩行障害・膀胱直腸障害など全身に影響が及ぶことがあり、全身症状がみられる場合には、MRI検査による精密検査を受けましょう。また、転倒による脊髄損傷(四肢の神経麻痺が起こる疾患)の可能性があるため、診断された場合には、転倒しないよう注意が必要です。
首~手に痛み・しびれ、手先の細かい作業・動作が難しくなる(例:お箸の使用、ボタンのはめ外し、字を書くなど)、
※重症例では、脚がもつれるなどの歩行障害、頻尿・残尿感などの膀胱直腸障害が出現することもあります。
頚椎症による脊髄の圧迫
薬物療法・注射療法による筋緊張コントロール、リハビリテーション(ストレッチ、運動療法、物理療法、自己管理指導)
ただし、日常生活に支障を来すような症状がある場合には、外科的手術を検討することがあります。
神経根は脊髄の左右にあるため、通常、圧迫は片側に起こり、症状も片側だけに現れます。一般的に積極的な保存治療で症状の改善が見込めます。
首・肩・腕の痛み、肩こり、しびれ、脱力感
頚椎症による神経根の圧迫
薬物療法・注射療法による筋緊張コントロール、リハビリテーション(ストレッチ、運動療法、物理療法、自己管理指導)
肩こり(首の痛み)が、頚椎や肩関節以外の問題によって起こっているケースもあります。
診察の結果、他の診療科での治療が必要な場合には、対応病院をご紹介させていただきます。
「本態性肩こり」とは検査を受けても異常は見られず、肩こりの原因となるような基礎疾患が存在しない、原因不明の「肩こり」のことです。肩こりを訴える方の大半を占めます。
とはいえ、現代の医学では異常が見られなくても、日頃の不良姿勢・運動不足などから、骨・軟骨の変形、血流の減少、筋肉のこわばり、筋力低下などがわずかに存在し、肩こりの発症に影響を与えていると考えられます。
肩こり(首の痛み)があれば、まずは肩こりを引き起こしている原因疾患がないかを確認します。問診や触診、必要に応じてX線検査・MRI検査などの検査から、総合的に診断します。
肩こりの症状や、首に負荷をかけるような環境の有無、病歴など詳しくお伺いします。
また、触診では僧帽筋の圧痛・筋緊張、肩関節の可動域、頚椎疾患などについてチェックします。
X線検査で頚椎疾患の有無などを確認することがあります。
ほかにも、必要に応じて、MRI検査、筋電図、血圧測定などの検査を行うことがあります。
※MRI検査の実施が必要と判断される場合、対応可能な提携施設・基幹病院などにご紹介させていただきます。
肩こりの治療では、明らかな原因疾患があれば、その治療を優先します。
当院では、原因疾患に応じて、一人一人に合わせたオーダーメイドの治療を行っております。痛みが強いときは、物理療法*2を行います。
*2物理療法:電気・光線・超音波・熱などの物理エネルギーを利用して、炎症や症状の改善、回復を促進する治療法。
頚椎疾患、首・肩周りに筋肉・筋膜に問題があるケースでは、主に消炎鎮痛効果のある内服薬・湿布などによる薬物療法やブロック注射を行います。
それでも不調が改善されない場合には、理学療法士によるリハビリテーション(物理療法・温熱療法・牽引療法・徒手療法・ストレッチなど)を実施して、血流改善や筋緊張を和らげ、こり・痛みの改善に努めます。
症状を緩和させるために、薬物療法と共に、理学療法士によるリハビリテーション(ストレッチ・運動療法・温熱療法・物理療法など)を行い、筋肉疲労やこりを改善させます。
痛みなどの症状と血流の改善を同時に図ることで、早期の症状緩和が期待できます。
当院では、リハビリテーションの際に再発および症状悪化を予防するため、ご自宅で行える体操・ストレッチなどについてもご指導させていただきます。
肩こりを予防するには、「適度な運動」「日常生活の見直し」「正しい姿勢」の3点が大切です。
筋肉負担が増加しているにもかかわらず、筋肉の血流循環がしっかりと行えていないと、「肩こり」を感じやすくなります。運動には「体温の上昇」「心臓の働きの活性化」「血液循環の促進」など、全身に対して効果が期待できますので、「肩こりの軽減」にも効果的です。
また、WHO身体活動・座位行動ガイドライン*3の中で、「成人(18~64歳)は、中強度の有酸素運動を少なくとも週に150~300分行うべきである」と推奨されています。
肩こり以外にも、身体活動によって様々な健康効果が期待できます。
デスクワークで一日中座りっぱなしが多いなど、日頃の運動不足を感じている方は、上記の推奨時間を参考にして日常生活に運動を取り入れていくことが「健康への近道」にもなります。
首や肩周りを冷やすと、血流が悪くなり、肩こりに繋がる恐れがあるので、できるだけ保温して、疲労を取り除きましょう。
肩こりや首の痛みでお悩みの方の多くは、日常生活で不良姿勢を取り続けることにより、気づかぬうちに身体が歪んでしまっています。その結果、頚椎・頚椎椎間板や首・肩周りの筋肉・筋膜に問題が起こり、肩こりの原因となってしまうのです。
肩こりを予防するためには、日頃から正しい姿勢を保つよう意識しましょう。
次の身体の部位が縦に一直線になることが、理想的な姿勢となります。
「肩こりくらいで病院にかかるなんて……」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、肩こりは、姿勢の悪さや筋肉疲労に由来して起こるものだけではなく、頚椎・肩関節の病気が原因となって発症するケースも少なくありません。また、中には高血圧や内臓疾患、眼精疲労など、首・肩回り以外の問題によって肩こりが起こっていることもあります。「単なる肩こり」と甘く考えず、発症原因をしっかり解明し、正しい治療を受けることが大切です。
なかなか改善しない肩こりを抱えている、肩こりの痛みを我慢している方は、一度当院までお気軽にご相談ください。