disease
疾患

一般整形外科全身

むちうち(交通事故)

交通事故は車・バイク・自転車の運転時だけに起こるものではなく、歩行時・信号待ちのときなど、予期せず誰にでも起こり得るのが怖いところです。

東京は日本の首都なので、地方と比べて交通インフラは整備されており、交通の便も良いのですが、人口日本一である上、交通量も全国トップクラスなため、交通事故が発生しやすい状況にあります。

警視庁の発表によると、2022年(令和4年)の東京都内における交通事故発生件数は約3万件、負傷者数は約3.3万人に上っています*1

*1(参考)交通死亡事故の特徴(令和4年中)|警視庁

交通事故直後は混乱や緊張によって症状を感じにくく、後から症状が現れ、怪我の後遺症・後遺障害に悩まれる方が多くいらっしゃいます。そのため、直後に痛みなどを自覚していなくても、必ず事故発生から2週間以内には「整形外科」を受診するようにしましょう。

当院では、患者様の身体的・心理的な問題を正面から受け止め、少しでも安心して治療に専念していただけるよう努めています。お気軽にご来院ください。

こんな症状ありませんか?

交通事故後、以下のような症状に思い当たることはありませんか?
その症状は、事故の影響で引き起こされているかもしれません。お気軽にご相談ください。

  • 腰や背中・腕など上半身がつらい
  • 検査では異常がないと言われたが、症状が治まらない
  • 身体が硬くなった、腕や足が上げづらいなど、関節の可動域が狭くなった
  • 自律神経症状(頭痛・だるさ・無気力・しびれ・めまい・食欲低下など)に悩まされている
  • 集中力が低下した(長時間の作業が苦手になる)
  • 痛む場所が移動する
    (例)「昨日は腰が痛かったが、今日は首が痛む」など
  • 夜間や明け方に症状が現れる
  • 季節の変わり目やある季節に症状が現れる
  • 雨の前や雨のときに症状が現れる
  • 症状が消えたと思ったら、数日後にまた現れることがある
  • 運動すると、痛みが増す
  • 身体の冷えや寒さに敏感になる
  • 姿勢によって、痛いときがある
  • 疲れやすくなった

交通事故による怪我の特徴

  1. 症状が長引く・後から出やすい
    交通事故による怪我は、強い衝撃を不意に受けたことによって起こるので、受け身が取れず、普段は傷めないような部分を傷める傾向があります。その結果として症状が長引きやすく、個人差はありますが症状の改善に3~6か月程度かかります。
    さらに、交通事故の怪我で多くみられる「むち打ち症」は、事故後少し経ってから症状が現れることもよくあるため、受傷当初に適切な治療を受けないと、複雑で重い症状となったり、長引かせたり(慢性化)する可能性があります。
  2. 痛みなど症状が強く現れる
    交通事故は、スピードが出る乗り物で起こる怪我なので、受傷時にかかるエネルギーは非常に大きく、ご本人が感じるよりも強い衝撃が身体にかかっています。予想外の強い衝撃によって骨や筋・腱・神経などの損傷が深くなり、痛みなどの症状が強く出やすい傾向があります。
  3. 目に見えない部分の損傷や精神的ストレスを受けやすい
    交通事故による怪我は、目に見える外傷(出血・骨折など)だけではありません。
    事故直後は、「血も出ていない、普通に歩けて、特にどこも痛くない」と思っていても、実は外から見えない部分に大きな損傷を負っている可能性があります。
    また、被害者の方にとっては「怪我をさせられた」という負の感情が生まれるため、今まで普通にできていた日常生活や仕事・学業などでの「些細な動作ができない不自由さ」に強いストレスを感じます。さらに、加害者と被害者の関係、自動車保険会社や職場への連絡、警察の介入など、不慣れな対応によっても精神的ストレスを引き起こしやすく、怪我の程度が軽くても「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」・うつ病・運転恐怖症・パニック障害などを発症する場合があります。
    そのため、検査で明らかな異常がないにもかかわらず、体の不調が現れる「不定愁訴(ふていしゅうそ)」に繋がることがあります。

むち打ち症とは?

むち打ち症は、「頚部外傷の局所症状」を意味する俗称です。

ヘッドレスト(座席にある枕のような部分)が車に標準装備されていなかった1960年代以前、車の追突・衝突事故の際に「首が鞭(むち)を打ったようにしなったこと」に由来して呼ばれていましたが、現在では「頚椎捻挫(けいついねんざ)」や「外傷性頚部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)」を意味して使われています。

頚椎捻挫の症状

頚椎捻挫とは「首の捻挫」のことで、筋肉・腱・靭帯・軟骨が傷つく怪我です。

主な症状は次の通りです。

  • 首から肩にかけての痛み・こり
  • 首が前後左右に動かない(可動域制限)
  • 頭痛

また、上記の症状に加えて、肩こり・めまい・吐き気・腕や手指のしびれ・睡眠障害・うつ状態・倦怠感(だるい・疲れやすい)などの全身症状がみられる場合には「外傷性頚部症候群」と呼びます。

ただし、むち打ち症では「事故直後に痛みや不調を感じない」ことが多く、一般的には事故から数日後に現れ、長い方では翌日以降に症状が現れるケースもあります。

頚椎捻挫の原因

頚椎捻挫の原因は、強い衝撃によって首の筋や腱、靭帯が損傷することです。

ただし、医学的な原因特定が難しい側面もあります。

頚椎捻挫の治療

発生直後の急性期は、痛みなどの症状を和らげるため、冷却や湿布・消炎鎮痛薬などの服用を行いながら首の安静を図りつつ、1週間程度様子を見ます。怪我の状況によっては、首に頚椎カラー(コルセット)などの固定用装具を用いるケースもあります。

ただし、過度の安静は症状を長引かせる可能性があるため、医師の指示に従って無理のない範囲で普段通りの生活・仕事を行うことが、早期治癒の近道とされています。

症状が落ち着いてきたら、医師の診断のもと、理学療法士と温熱療法・物理療法・徒手療法・ストレッチ・体操などのリハビリテーション治療を始め、機能改善・回復を目指します。

交通事故による怪我の検査・診断

問診・視診・触診

患者様の自覚症状や、受傷したときの状況などについて、医師が詳しくお伺いします。

また、触診・視診から筋肉や腱の張り・骨格・姿勢などの異常の有無を確認します。

X線検査(レントゲン)

X線検査では、骨格系を評価します。

なお、むち打ち症の場合、骨折や脱臼などはみられません。

当院では従来のX線検査機器と比べて、高品質なX線画像が得られ、放射線線量の低減も可能な「デジタルX線検査装置」にて撮影します。

超音波検査(エコー)

レントゲン検査では写らない筋肉や腱・靭帯・軟骨の損傷具合、内出血、組織の炎症および癒着の観察も可能です。

(画像)当院で使用している超音波検査装置

必要に応じて、血液検査による炎症反応やMRI検査などの画像検査を実施することがあります。

※MRI検査が必要と判断された場合、提携施設などにご紹介させていただきます。

交通事故による怪我の治療

交通事故の状況や怪我の程度によって個人差はありますが、交通事故による怪我の治療期間の目安は、概ね2~3か月、長い方では6か月程度となります。

急性期の治療

受傷から1週間前後の急性期では、基本的に患部の安静を図りつつ、薬(内服薬・外用薬)による鎮静や装具療法を行います。痛みが強い場合には神経による痛みの伝達を妨げる「神経ブロック注射」を打ったり、首の安静保持のためにコルセットなどの装具で固定したりすることがあります。また、生活の中で気を付けることや動きの説明など、生活指導も行います。

回復期の治療

症状が良くなってきた回復期からは、徒手療法・温熱療法・物理療法(電気・光線・超音波などの物理エネルギーを使用した治療法)・ストレッチといったリハビリテーション治療、姿勢矯正の中から、患者様の状況に合わせ治療法を選択して、症状改善や運動機能の回復に努めます。

よくある質問

1)交通事故後、症状の改善のために「病院」か「接骨院」「整骨院」どちらに行くか迷っています。

交通事故に遭った方の中には、「病院(整形外科)に行った方が良いのか?」「接骨院・整骨院に行った方がいいのか?」と迷う方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、病院(整形外科)と接骨院・整骨院などでは、対応できることが根本的に異なりますので、違いをご理解いただいた上で選択されると良いでしょう。

  • 検査・診断・治療など医療行為は、「整形外科のみ」で実施できる
    病院(整形外科)は、国家資格を持った医師が医学に基づいて、医療行為(検査・処置・投薬・治療・手術・リハビリテーションなど)を行う場です。
    痛みなどの症状が引き起こされている原因を詳しく検査することで明らかにし、原因に合わせて効果的な治療を選択できます。
    一方、接骨院・整骨院では、国家資格を持った「柔道整復師」による施術として、医学の専門的知識や技能を必要としないマッサージ、温熱、電気療法が実施されています。これらは「医業類似行為」と呼ばれ、法律上はあくまでも「健康管理の一環」という位置づけとなるため、原則的に脱臼や骨折の患部に施術することはできません。また、費用は基本的に自費となりますが、医師の同意がある場合に限り、健康保険が適用されるケースもあります。
    なお、カイロプラクティックや整体・骨盤矯正・気功などでは施術者の法的資格が不要であり、費用はすべて自費負担となります。
(図)整形外科と接骨院などとの違い
  • 「後遺症診断書」は、整形外科でのみ作成可能
    損害賠償請求など交通事故による後遺症認定の際に必要となる「後遺障害診断書(正式名:自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書)」の作成は、医師のみ作成可能です。
    なお、先に接骨院・整骨院へ通院するなど、事故より時間が経ってから整形外科を受診した場合、怪我と事故との因果関係の証明が難しくなることがあります。
    事故直後に「痛みなどの自覚症状がない」「軽い怪我」と感じても、交通事故に遭ったときは、できるだけ早く整形外科を受診して、診察・検査しておくことが大事です。

2)交通事故の治療費はどのくらいかかりますか?

原則的に交通事故での治療費は「加害者側」が負担することになっているため、被害者側(患者様)は負担金なしで治療をお受けいただけます。

通常、治療費は相手側の加入している自動車保険(自賠責保険)や任意保険でまかなわれるため、保険会社が直接医療機関へ支払いを行うことになります。

ただし、保険会社からの事前連絡よりも先に受診されたときは、一時的に患者様の立替金(自費)が発生します。保険会社からの連絡確認が取れた後、ご負担分(立替金)をご返金させていただきます。

なお、被害者側の過失が大きいケースなどでは、相手側の保険会社より治療費の対応をしてもらえない場合があります。

3)交通事故での治療には「治療の区切りがある」というのは本当ですか?

はい、本当です。交通事故での治療には「治療期間の区切り」が存在します。

どういったときに区切りが発生するかというと、「これ以上治療しても症状の改善が見込めず、良くも悪くもならない状態(=症状固定)になったとき」です。

症状固定は「損害額算定の基準点(障害分・後遺障害分)」とみなされることが多く、通常保険会社ではその時点で治療費の支払いを終了します。

※必ずしも症状固定=加害者側保険による治療費支払いの打ち切りではありません。

この症状固定の決定は、保険会社が決めるのではなく、医師が診断するものとなります。

当院では、症状固定について医学的判断は医師が行いますが、タイミングについては患者様と一緒に相談しながら決めさせていただいております。

まとめ

交通事故に遭ったときには、痛みなど感じていなくても、すみやかに整形外科を受診しましょう。交通事故による怪我では、早期診察および早期治療開始が大切です。症状の早期回復が期待できるだけでなく、痛みの慢性化などの後遺症、精神的ストレスによる二次障害への発展を防いで日常生活への悪影響を最小限に留めます。

当院では怪我の部分だけでなく、症状が出現しているところ以外もしっかり診察・治療し、交通事故によって怪我を負った皆様が一日でも早く普段の生活に戻れるようサポートしています。