disease
疾患

一般整形外科足関節周囲、足趾

足関節捻挫(足関節靭帯損傷)

「足関節捻挫(そくかんせつねんざ)」とは、足首の関節を内側に捻る(ひねる)ことによる軟部組織の損傷で、外くるぶしの周りに痛み・腫れ・圧痛(押すと痛む)などの症状が現れます。足関節捻挫はスポーツ時の怪我の中で一番多い疾患であり、一緒に靭帯を損傷するケースが多いので、「足関節靭帯損傷」と呼ばれる場合があります。また、日常生活において階段の踏み外しなどでも容易に起こるため、身近な外傷として放置されがちですが、放置すると痛みが長期化したり、不安定な足首となったりして、その後の治療が難航することがあります。
「捻っただけだから大丈夫」と軽視せず、きちんと診断を受け、初期段階から適切な治療を受けることが必要です。お気軽に当院までご相談ください。

足関節と捻挫

「足関節(そくかんせつ)」は、足首にある関節の総称です。体を支える脛骨(けいこつ)・腓骨(ひこつ)などの「脚」と、地面に接する踵骨(しょうこつ:かかとの骨)などの「足」を繋ぐ働きをしています。また、立位では足関節に全体重がかかるため、一時的な疲労・痛みを感じやすい部位でもあります。
外力によって足関節が正常な可動域を超えてしまう(=捻る)と、支えている靭帯や関節包(かんせつほう)などの軟部組織の損傷が起こり、「捻挫」という外傷性疾患になります。

足関節捻挫には、大きく分けて2つあります。

  • 内反捻挫
    足を内側に捻ることで起こる捻挫で、足関節の多くは「内反捻挫」です。
    スポーツではバスケットボールやバレーボールなどジャンプする競技で特に多く発生します。
  • 外反捻挫
    足を外側に捻ることで起こる捻挫です。ラグビー、アメリカンフットボール、レスリング、柔道など競技者同士が直接接触する形式のスポーツで多くみられます。
(図)内反捻挫のイメージ

足関節捻挫(足関節靭帯損傷)の症状

足関節捻挫での症状は、捻挫の程度によって大きく3つに分けられます。腫れ・痛みがあるときには、無理に歩かないようにしましょう。

  • 軽症
    外くるぶしの前・下あたりに軽い腫れと圧痛が現れます。歩いたり軽く走ったりすることは可能です。
    放置すると、足関節が脆弱化して、捻挫の再発が起こりやすくなります。
  • 中等症
    外くるぶしの広範囲に腫れと圧痛が現れます。
    関節の不安定さは、あまりみられませんが、歩けても走れないことが多いです。
  • 重症
    外くるぶし周囲に強い腫れ・圧痛・皮下出血が現れます。関節の不安定さから、自力で体重を支えられないため、歩くことができません。また、可動域の低下も認められます。

足関節捻挫(足関節靭帯損傷)の原因

足関節捻挫の原因

足関節捻挫の主な原因は、内側に捻ることによる足関節外側の靭帯損傷です(=足関節靭帯損傷)。外側靭帯の中でも「前距腓靱帯(ぜんきょひじんたい)」の損傷がよくみられます。

(図)足関節の構成(右足)|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/sprain_of_ankle.html

足関節捻挫の重症度分類

靭帯の損傷具合によって、捻挫の重症度を3段階に定義しています。
これらの分類は、回復の予測や治療方法を選択するために重要な目安となります。

  • 1度捻挫(軽症)
    少し捻った状態で靭帯が伸びる程度の損傷です。
  • 2度捻挫(中等症)
    靭帯の一部が切れてしまった状態です。応急処置後、医療機関できちんと検査を受けましょう。
  • 3度捻挫(重症)
    靭帯が完全に切れてしまった状態です。きちんと医療機関で治療しましょう。

足関節捻挫(足関節靭帯損傷)の検査・診断

一般的に問診や触診(徒手検査)から診断可能ですが、骨折など他の疾患との鑑別のため、X線検査・超音波検査などの画像検査を行うことがあります。

問診・触診

痛みなどの症状や発症時の様子などについて、詳しく伺います。
また、触診では外くるぶしの前・下に圧痛や腫れがあるかどうか、確認します。

X線検査(レントゲン)

骨折の有無を調べるために実施します。高度な靭帯損傷が疑われる場合、緩みを確認するため、関節にストレスをかけてレントゲン撮影を行うことがあります。

超音波検査(エコー検査)

骨折がない場合、超音波検査でレントゲン写真ではうつらない筋肉・腱・靭帯の損傷、内出血など組織の炎症を確認します。関節を動かしながらの検査が可能なので、組織の動的な評価が行えます。

そのほか、必要に応じてMRI検査を実施することがあります。
※MRI検査が必要と判断された場合には、提携医療機関をご紹介します。

足関節捻挫(足関節靭帯損傷)の治療法

足関節捻挫の受傷直後は、RICE処置(応急処置)を行い、安静を保ちます。
捻挫では、特にこの初期治療が大事です。

足関節捻挫の応急処置

足関節を捻った場合には、患部の出血・腫れ・痛みの緩和のため、応急処置の基本「RICE処置」を行います。

  1. 患部を安静にする(Rest)
  2. 氷で冷却する(Icing)
    ※冷たい湿布では、冷やしたことになりません。氷か保冷剤などで冷やしましょう。
  3. 弾性包帯やテーピングで圧迫する(Compression)
  4. 患部を挙上*1する(Elevation)

*1挙上:心臓よりも高い位置に上げること

(画像引用)スポーツ外傷の応急処置|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/athletic_injury.html

足関節捻挫の治療法

ほとんどの足関節捻挫(1度・2度捻挫)は、最小限の「保存的治療」で治癒可能です。
ただし、3度捻挫(重症)の場合には、外科的手術が必要になることもあります。
当院では、安静後、早い段階から運動療法や理学療法などの「リハビリテーション治療」を行って、機能・筋力低下を予防して早期復帰を目指します。

  • 保存的治療 初回受傷時、適切な固定や安静期間を設けて靭帯を回復させることで、「関節の不安定感が残る」「捻挫を繰り返しやすくなる」という状態に進行することを防ぎます。中途半端な状態で競技復帰した場合、さらに悪化することで軟骨変形や足関節のインピンジメント症候群(関節がうまく動かせない状態)の原因となるため、注意が必要です。
    歩行が正常に行えるようになるまで、松葉づえを使用します。
    • 安静・固定
      RICE処置から引き続き、1度捻挫ならテーピング・サポーター・弾性包帯による固定、2度捻挫であれば、シーネ(添え木)固定、3度捻挫ではギプス固定を行います。軽症では2~3日程度、中等症・重症の場合には数週間患部を安静にします。
    • 薬物療法
      氷や保冷剤などによるアイシングの替わりに「湿布」を用いて、腫れ・熱感の軽減を促します。
  • リハビリテーション
    リハビリテーションとは、医師の指示のもと、国家資格である理学療法士と一緒に、ストレッチなどの運動療法や温熱・電気・装具などの物理療法といった治療を行うことです。
    足関節捻挫では、受傷直後の急性期(受傷から2週間程度)から患部外のトレーニングを始めます
    痛み・腫れが引いて、足を引きずらないで歩けるようになってきたら、バランスや筋力低下を最小限に留めるようなストレッチ・トレーニングなどを行います。経過に合わせて、段階的に運動強度を上げていきます。なお、靭帯再建手術を予定している場合にも、術後の経過をよくするために術前からリハビリが必要となります。
  • 外科的手術
    関節の不安定性が強い「重症捻挫」では、外科的手術による「靭帯再建術」を行うことがあります。
    通常、関節鏡下手術にて実施するので、外くるぶしの周囲に関節鏡を挿入するための小さな傷を数か所開けます。関節鏡で靭帯損傷の程度などを確認しながら、糸で縫い合わせます。
    ※検査・診断の結果、手術が必要と判断された場合には、近隣の対応病院をご紹介させていただきます。

よくある質問

1)足関節捻挫(足関節靭帯損傷)では、病院に行った方が良いのでしょうか?

はい。足関節捻挫は、きちんと診察を受けて、適切な治療をする必要がある疾患です。
損傷程度は、少し緩んでしまう状態~靭帯が完全に切れてしまう(断裂)状態まで個人差があり、スポーツのときだけでなく日常生活において「足をくじく」ことはよく起こり得るので、軽視されがちです。しかし、初回受傷時にきちんと治していないと、関節の不安定さの原因となり、同じような捻挫を繰り返しやすくなります。「捻挫がクセになった」という場合は、「捻挫をしっかり治療していなかった」という可能性があるのです。

足関節捻挫では、受傷直後の応急処置が大事です。まずは氷などでしっかり冷やし、テーピングや包帯などで圧迫し、なるべく足首を動かさないよう安静にしましょう。その後、すみやかに当院など整形外科を受診することをおすすめします。

2)足関節捻挫(足関節靭帯損傷)を治療した後のスポーツ復帰時期について教えてください。

スポーツへの復帰時期は、患者様の年齢・状態(重症度)・スポーツの内容によって異なりますが、目安は以下の通りです。

  • 軽症
    RICE処置後、受傷から数日程度でスポーツ復帰できるケースがあります。
  • 中等度
    RICE処置後、受傷から3週間程度で足首にサポーターなど装具を付けながらのスポーツ復帰が可能です。
  • 重症
    ギプス固定後、装具を付けながら可動域の改善や筋力の回復などのリハビリを開始し、受傷から約4~6週間後よりジョギング等の軽い運動を始めます。徐々に運動量・強度を増やしていきます。その後、競技特性に合わせたリハビリを続け、平均して術後約8~12週間でスポーツ復帰を目指します。

3)足関節捻挫(足関節靭帯損傷)の予防法を教えてください。

足関節捻挫を予防するには、「足首の柔軟性」「足首の安定化を高める筋力・バランス」が必要となります。次のようなポイントに注意すると良いでしょう。

  • 日頃から足首まわりのストレッチ・筋力トレーニングを行う
    足首を回したり、アキレス腱・ふくらはぎを伸ばしたりすることで足関節の可動域が広がり、柔軟性が向上します。また、以下で説明する「タオルギャザー」により足の指を鍛えると、踏ん張る力やバランス向上が期待できます。
    スポーツをする前には、必ずウォーミングアップ(準備運動)をしましょう。普段からスポーツをしている方も油断せず、しっかり行いましょう。
    <足首のストレッチ>
    足を伸ばして足の裏にタオルをかけ、ふくらはぎ・アキレス腱が突っ張った感じがするところまで、タオルを身体の方に引っ張ります。20〜30秒間引っ張って戻すことを3〜4回繰り返します。その際、足首が90度になるようします。
    (図)足首のストレッチ
    <タオルギャザー>
    (図)タオルギャザー
  • サポーター・テーピングなどで足首の安定化を図る
    捻挫予防ならびに再発予防に効果的です。
    (画像)テーピングのイメージ
  • 足に合った歩きやすい靴を履く
    靴紐のある靴、足に合ったサイズ・かかとの低い安定感のある靴を履いて、身体のバランスを正しく取りながら歩くようにしましょう。

まとめ

「足関節捻挫」は日常生活でも起こり得る一般的な怪我ですが、多少の痛みがあっても歩行だけでなくスポーツ復帰ができてしまいます。「捻挫は軽い怪我」と考えて放置してしまうと、関節の不安定さから「捻挫の再発を繰り返す後遺症」が残るリスクがありますが、世間では十分に認識されているとは言えません。しかし、実際に検査をすると靭帯が損傷しているケースは多々あるのです。
足を捻った場合には、まずは応急処置として氷で冷やして安静にした後、しっかり診断を受けて早期から適切な処置を開始しましょう。特に痛みで歩けないとき、足を引きずるときには、すみやかに整形外科を受診してください。
当院では、医師と理学療法士が連携しながら、リハビリテーション治療によって再発や新たな部位の痛みの発生を予防する「積極的保存療法」に力を入れています。お気軽にご相談ください。