アキレス腱炎(周囲炎)とは、かかとの骨(踵骨:しょうこつ)とふくらはぎの筋肉を結ぶ太い腱「アキレス腱」や腱の周囲に過剰な負荷がかかり、炎症を起こした状態のことです。長距離ランナー・中年以降のスポーツ愛好家によく発症する疾患で、発症するとアキレス腱からかかとの後ろ側にかけて痛み・腫れ・圧痛(押すと痛む)などの症状が現れます。一方で、普段は体を動かす習慣がない方が急に運動したときにも発症することがあります。
痛みは運動を開始した直後や歩き出しに強く現れますが、運動を継続していると次第に軽減してくる特徴があるため、「気のせい」と思われやすい疾患です。しかし、一時的に良くなっても、アキレス腱を使いすぎると再発するので、アキレス腱の痛み・腫れに気づいたら、お早目に当院までご相談ください。
ふくらはぎの筋肉(腓腹筋:ひふくきん、ヒラメ筋)とかかとの骨を繋ぎ、かかと上部にある太い筋状の腱が「アキレス腱」です。
アキレス腱の主な役割は、ふくらはぎの筋力をかかとの骨に伝え、足首を上下に曲げたり、足関節にかかる衝撃を調整したりすることです。ランニングで踏み込んで地面を蹴るとき、ダッシュ・ジャンプの着地、急停止など、ふくらはぎの筋肉が足の裏を踏み返すといった動作は、特にスポーツの場面において多用されるため、アキレス腱に負荷が集中しやすい傾向があります。
アキレス腱は明らかな外傷(怪我)以外にも、過剰な負荷がかかることによって小さな断裂・損傷が起こります。血管が通っているため自然修復可能な部位ではありますが、微細な損傷・修復を繰り返すうちに再生できなくなり、アキレス腱そのものに炎症が起こって「アキレス腱炎」になります。
また、アキレス腱炎は炎症が起こる部位によって、診断上2つの疾患に分けられますが、症状や原因・治療法はほとんど同じです。
アキレス腱やその周囲に炎症が起こると、次のような症状が現れます。
アキレス腱炎(周囲炎)の直接原因は、「アキレス腱の使い過ぎ」です。
アキレス腱は酷使されやすく、常に損傷・再生を繰り返している部位です。
運動などによりアキレス腱に強い負荷がかかった後、十分に休息を取らずに再び過剰な負荷をかけることを繰り返すと、アキレス腱は修復できなくなり、アキレス腱炎を引き起こします。
また、次のような要因もアキレス腱への過剰負荷に影響を及ぼしています。
問診や触診、超音波検査などの画像検査からアキレス腱の状態を評価して、診断します。
自覚症状、「どのようなときに痛むのか」などについて、詳しく伺います。
また、触診ではアキレス腱の腫れや圧痛の部位、「足関節を動かしたときに痛みの場所が移動するか」を確認します。痛みの場所が移動すると「アキレス腱炎」、場所が変わらなければ「アキレス腱周囲炎」が疑われます。
超音波検査でアキレス腱の状態を調べます。超音波検査は、レントゲン写真ではうつらない腱・靭帯・筋肉の損傷、内出血など組織の炎症の確認が可能であり、さらに関節を動かしながらの検査もできるため、組織の動的な評価が行えます。
そのほか、必要に応じてX線検査(レントゲン検査)やMRI検査を実施することがあります。
※MRI検査が必要と判断された場合には、提携医療機関をご紹介します。
アキレス腱炎(周囲炎)の基本的治療は、「過度な運動を中止して、安静にすること」です。
アキレス腱炎は軽い炎症であれば、アイシング処置や患部の安静だけでも症状は軽減していきます。しかし、それでも「症状が改善しない」「歩けない」「腫れがひどくなってきた」といった様子がみられるのであれば、すみやかに整形外科を受診されることをおすすめします。
また、アキレス腱付近の急な痛みが現れる疾患には、アキレス腱炎以外にも「アキレス腱断裂」「かかとの骨折」などがあります。これらの疾患では治療タイミングが遅れると、完治に時間がかかり、手術が必要になることもあるため、強い痛みや腫れが現れたら、すぐに整形外科を受診しましょう。
アキレス腱炎の発症では、「ふくらはぎの筋肉の酷使を防ぐ」ことが重要です。
アキレス腱炎の予防法のポイントは、以下の通りです。
アキレス腱炎は「ふくらはぎの筋肉・アキレス腱の使い過ぎ」によって発症するため、運動したら「冷やす・安静にする」ことを徹底して、筋肉や腱にかかった過剰な負荷を蓄積させないことが大切です。アキレス腱炎の多くは、冷却・安静・お薬・リハビリなどの保存的治療で症状の改善がみられます。しかし、「痛みが軽いから」と、過剰な負荷のかかる運動を続けると、炎症が悪化したり、「アキレス腱断裂」「踵骨骨折」など別の疾患に繋がったりする恐れもあるので、早めに整形外科を受診するとよいでしょう。
当院では、医師と理学療法士が連携しながら、リハビリテーション治療によって再発や新たな部位の痛みの発生を予防する「積極的保存療法」に力を入れています。お気軽にご来院ください。