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関節リウマチは「自己免疫疾患」のひとつです。免疫異常によって関節周囲の滑膜(かつまく:関節を覆っている膜)が炎症を起こすことで、手足の関節の痛みや腫れを引き起こす病気です。特徴的な初期症状として、「朝の手指のこわばり(違和感)」があります。また、進行すると、骨や軟骨が破壊されて動かせなくなったり、人によっては貧血・倦怠感といった全身症状を合併したりするなど多彩な症状がみられ、個人差もあります。
近年、関節リウマチのお薬が劇的に進化したことで、関節の変形・破壊を予防しながら、寛解*1を目指せる病気となりました。
*1寛解:症状が治まって、穏やかな状態
ただし、関節リウマチの症状コントロールには、早期発見・早期治療開始が欠かせません。
「朝に手のこわばり(違和感)・手足の動かしづらさ」を感じている方は、お早めに当院までご相談ください。
リウマチ(リウマチ性疾患)とは、関節や筋肉が痛む病気の総称です。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症などの「膠原病(こうげんびょう)」が含まれます。
膠原病は「自己免疫疾患」とも呼ばれる、免疫異常によって自分自身を攻撃してしまう病気です。
当院では、免疫が関節を攻撃する病気「関節リウマチ」の診療を取り扱っています。
※その他の膠原病については、適切な治療を行える他の医療機関をご紹介させていただきます。
こんな症状に心当たりはありませんか?
これらの症状が1週間以上続いている場合には、関節リウマチの可能性がありますので、一度受診されることをおすすめします。
厚生労働省の患者調査*3によると、関節リウマチで病院に通っている方は約34万人と推計されていますが、症状があっても病院に通っていない方を含めた総患者数では約70万~100万人と推察されています。
*3(参考)令和2年患者調査|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/index.html
患者様の男女比を見ると、女性は男性の約5倍となっていますが、男性でも発症することがあります。30代~50代に発症のピークがある一方で、近年は20代や60代以降での発症も増えています。
また、これまでの研究から、関節リウマチの既往歴があるご家族がいる方、喫煙されている方では、そうでない方と比べて、発症リスクが高くなるという報告があります。
関節リウマチは、他の関節疾患とは異なり、「関節を動かさなくても痛む」という特徴があります。関節リウマチによる関節炎が進行すると、関節軟骨や骨の破壊によって、変形・可動域制限が生じ、日常生活に支障を来すようになります。
症状の程度は、軽症~重症まで個人差があります。
そのほか、関節内の液が大量に溜まり腫れる「関節水腫」、手指の動きが悪くなる「腱鞘炎(けんしょうえん)」、肘・足関節・膝の前面に痛みや腫れが現れる「滑液包炎(かつえきほうえん)」、リウマチの進行によって、外反母趾や手足の指が反るなど「関節変形」が起こることもあります。
関節リウマチによる関節症状は、手足の指(第二関節)や指の付け根・手首などの小さな関節に現れやすく、左右対称に同時出現も多くみられます。ただし、「片側だけ」「複数の関節」「肘・肩・膝・足首など他の関節に広がる」ケースがあります。なお、手指の第一関節に症状が現れることは稀です。
(画像引用)関節リウマチの手足の変形|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rheumatoid_arthritis.html
リウマチによる炎症は皮膚・目・肺・血管など全身に広がることもあるため、広がる前に適切な治療を受けることが大切です。
気を付けたい全身の合併症には、次のような疾患があります。
今のところ、関節リウマチの原因は明確になっていませんが、「免疫異常」によって引き起こされていると考えられています。本来、身体を守る働きをする「免疫」が何らかの理由で異常を来し、関節を守る組織・骨・軟骨など自身の成分を「外敵」とみなして、攻撃して(壊して)いるのです。
免疫異常が起こる要因には「遺伝要因」と「環境要因」があり、それぞれが複雑に関係して発症しているとされます。
免疫異常によって、炎症を起こす物質「炎症性サイトカイン」が関節の内側を包む薄い膜「滑膜」に炎症反応を引き起こすことで、痛み・腫れなどの関節症状が現れます。関節内の炎症が進むと、軟骨・骨が破壊されて、次第に関節の変形が起こります。
これまでの研究により、関節リウマチの関節破壊は発症早期から進行することが分かっています。レントゲン検査で関節破壊を認めてからの診断・治療では、早期発見とは言えません。当院では「関節エコー」によって、関節破壊が起こる前のリウマチの早期診断に努めています。
近年は早期診断を目指し、アメリカリウマチ学会(ACR)/ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)の分類基準が用いられるようになっています。
当院もガイドラインに則り、症状や症状の持続期間(6週間以上)、血液検査・X線検査・超音波検査などの結果から、総合的に診断します。
なお、血液検査で血清リウマトイド因子が陽性の場合でも、あくまで「診断基準の一つを満たす」というだけであり、その結果だけで関節リウマチと診断することはできません。
関節リウマチでは、「いかに早い段階から治療を開始するか」が重要となります。
関節リウマチの治療は「薬物療法」を基本として、必要に応じて「外科的手術」「リハビリテーション」を組み合わせて進めていきます。近年の薬物療法の進化によって、関節リウマチは症状コントロールの難しい病気から「症状コントロールの可能な病気」に変わっています。
当院では病状だけでなく、お仕事や日々の生活を含め、患者様と一緒に相談しながら治療方針を決めていきます。
関節リウマチの治療目標は、次のような3つの寛解の維持です。
「抗リウマチ薬」を基本に、患者様の症例に合わせて様々な種類のお薬を併用して、関節破壊の進行を遅らせます。
※お薬は自己判断によって途中で止めたり減らしたりすることは、大変危険です。副作用や効き方など気になる点がある場合には、医師までお気軽にご相談ください。
リハビリテーションとは、医師の指示のもと国家資格である理学療法士と一緒に行う治療です。運動やストレッチ、物理療法(電気刺激・マッサージ・温熱など)、補助具(装具療法)を使い、機能回復・改善を目指します。 関節リウマチでは、手の握り開き(手をグーパーする)、指の開き寄せ(指を開いて、くっつける)、手首や足の上げ下げなどの体操で関節を毎日少しずつ動かし、関節の固まりを防ぎます。
薬物療法を行っても十分な効果が得られない場合には、外科的手術を検討します。
破壊された関節を人工の関節に入れ替え、関節の働きを戻す「人工関節置換術 ( じんこうかんせつちかんじゅつ)」、首の骨(頚椎:けいつい)に変形が起こり、手足の痺れ・麻痺がみられるときには頚椎を固定するための「関節固定術」、指の腱が断裂した場合には「手指伸筋腱再建術」といった手術があります。
※手術が必要と判断された場合には、適宜対応病院をご紹介します。
治療開始当初は2週間に1回の頻度で通院していただきます。治療に慣れてきたら、月1回の通院で進めていきます。また、定期的に血液検査・尿検査なども実施して、患者様に合った治療方針を見つけながら、リウマチのコントロールをしていきます。治療中に気になることやご心配事などありましたら、お気軽にご相談ください。
どちらも関節リウマチではなく、別の病気の可能性があります。
指先の第一関節の痛み・腫れは、「ヘバーデン結節」でよくみられます。関節リウマチで第一関節に症状が現れることが稀にありますが、その場合には第二関節にも同じような炎症が起こり、痛みます。
また、男性で「足の親指の腫れ・痛み」が現れる病気として、「痛風(つうふう)」があります。痛風では、関節リウマチと異なり、他の関節に炎症は起こりません。
関節リウマチと同じような症状の病気はたくさんあります。しっかり鑑別するために、気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
患者様が関節リウマチに対する正しい知識を持ち、日常生活を管理していくことが大切です。次のようなポイントに注意して、過ごしましょう。
関節リウマチは免疫異常によって引き起こされている病気ですが、いまだに免疫異常の発生原因が明らかになっていないため、残念ながら確実に発症を防ぐ方法は確立されていません。
しかし、近年の研究によると、発症に喫煙習慣や歯周病菌に対する免疫応答が関連するという報告がなされており、禁煙・定期的な歯磨きなど「お口のケア」が予防策のひとつとして期待されています。
これまでの研究から「関節リウマチの症状コントロールには、早期発見・早期治療開始が重要である」と分かっています。ひと昔前までは、症状を緩和させる「対症療法」しかなかったので、関節リウマチは「一生治らない」「将来寝たきりになる病気」というイメージがあるかもしれません。しかし、現在は新しい診断基準に変わり早期発見が容易になった上、抗リウマチ薬や生物学的製剤など新しいお薬の登場によって、「関節破壊の進行抑制」「寛解の維持」を同時に目指せる病気へと変わり、患者様のQOL(生活の質)を高める治療が行えるようになっています。
関節の痛み・腫れ・朝のこわばりなど、「もしかして関節リウマチかな」と思ったら、早めに当院までご相談ください。
また、関節リウマチでは治療が長期間となります。患者様・ご家族様においては根気よく治療していく心構えが必要です。治療中に何か気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。