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疾患

一般整形外科全身

関節リウマチ

関節リウマチは「自己免疫疾患」のひとつです。免疫異常によって関節周囲の滑膜(かつまく:関節を覆っている膜)が炎症を起こすことで、手足の関節の痛みや腫れを引き起こす病気です。特徴的な初期症状として、「朝の手指のこわばり(違和感)」があります。また、進行すると、骨や軟骨が破壊されて動かせなくなったり、人によっては貧血・倦怠感といった全身症状を合併したりするなど多彩な症状がみられ、個人差もあります。
近年、関節リウマチのお薬が劇的に進化したことで、関節の変形・破壊を予防しながら、寛解*1を目指せる病気となりました。
*1寛解:症状が治まって、穏やかな状態
ただし、関節リウマチの症状コントロールには、早期発見・早期治療開始が欠かせません。
「朝に手のこわばり(違和感)・手足の動かしづらさ」を感じている方は、お早めに当院までご相談ください。

リウマチとは?

リウマチ(リウマチ性疾患)とは、関節や筋肉が痛む病気の総称です。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症などの「膠原病(こうげんびょう)」が含まれます。
膠原病は「自己免疫疾患」とも呼ばれる、免疫異常によって自分自身を攻撃してしまう病気です。
当院では、免疫が関節を攻撃する病気「関節リウマチ」の診療を取り扱っています。
※その他の膠原病については、適切な治療を行える他の医療機関をご紹介させていただきます。

関節リウマチのセルフチェック

こんな症状に心当たりはありませんか?
これらの症状が1週間以上続いている場合には、関節リウマチの可能性がありますので、一度受診されることをおすすめします。

  • 朝起きてから15分~30分程度、手のこわばり(力が入りにくい)・動かしにくさ*2を感じる
    *2例)服のボタンのかけ外しがしにくい、食事の準備がしにくい、靴紐・リボンなどが結びにくい、ドアノブが回しにくいなど
  • 手足の指、手首・足首・膝などの関節が腫れて、痛い
  • 関節が変形している
  • 関節が熱っぽい
  • 目や口が渇きやすい
  • 食欲不振・疲れやすい
  • 血液検査をしたら、リウマチ因子が陽性だった

関節リウマチになりやすい人

厚生労働省の患者調査*3によると、関節リウマチで病院に通っている方は約34万人と推計されていますが、症状があっても病院に通っていない方を含めた総患者数では約70万~100万人と推察されています。
*3(参考)令和2年患者調査|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/index.html
患者様の男女比を見ると、女性は男性の約5倍となっていますが、男性でも発症することがあります。30代~50代に発症のピークがある一方で、近年は20代や60代以降での発症も増えています。

また、これまでの研究から、関節リウマチの既往歴があるご家族がいる方、喫煙されている方では、そうでない方と比べて、発症リスクが高くなるという報告があります。

関節リウマチの症状

関節リウマチは、他の関節疾患とは異なり、「関節を動かさなくても痛む」という特徴があります。関節リウマチによる関節炎が進行すると、関節軟骨や骨の破壊によって、変形・可動域制限が生じ、日常生活に支障を来すようになります。

関節リウマチの初期症状

症状の程度は、軽症~重症まで個人差があります。

  • 朝のこわばり
    関節リウマチの特徴的な症状です。朝起きてすぐに、手(指)を開きにくかったり、手が動かしづらかったりする症状がみられます。食事の用意や着替えなどの際、手に違和感がありますが、起きてから30分程度で症状は軽減します。
  • 関節の痛み・腫れ(関節炎)
    両方の手や足の指の関節に痛み・腫れ・熱っぽさが現れます。
    人によっては、手首、肘、肩、足首、膝、股関節など全身の関節に広がっていくこともあります。
  • 微熱・倦怠感・食欲不振などの全身症状
    37℃台の微熱、だるい感じ(倦怠感)、食欲不振、貧血、リンパ節の腫れなどの全身症状が現れることもあります。目や口が乾いたり、息切れなどを感じたりする場合があります。

そのほか、関節内の液が大量に溜まり腫れる「関節水腫」、手指の動きが悪くなる「腱鞘炎(けんしょうえん)」、肘・足関節・膝の前面に痛みや腫れが現れる「滑液包炎(かつえきほうえん)」、リウマチの進行によって、外反母趾や手足の指が反るなど「関節変形」が起こることもあります。

関節症状が現れやすい部位

関節リウマチによる関節症状は、手足の指(第二関節)や指の付け根・手首などの小さな関節に現れやすく、左右対称に同時出現も多くみられます。ただし、「片側だけ」「複数の関節」「肘・肩・膝・足首など他の関節に広がる」ケースがあります。なお、手指の第一関節に症状が現れることは稀です。

(画像引用)関節リウマチの手足の変形|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rheumatoid_arthritis.html

関節リウマチの合併症

リウマチによる炎症は皮膚・目・肺・血管など全身に広がることもあるため、広がる前に適切な治療を受けることが大切です。
気を付けたい全身の合併症には、次のような疾患があります。

  • リウマトイド結節(けっせつ)
    肘・膝などにできやすい「しこり」。大きさは米粒大~小豆程度まで様々です。
  • 肺障害
    関節リウマチの約10%~30%の方に、息切れ・空咳が現れる「間質性肺炎(リウマチ肺)」「肺線維症」などの合併が起こります。また、肺に水が溜まる「胸膜炎」を発症することもあります。
    ※間質性肺炎はリウマチ薬の副作用でも起こる場合があるため、注意が必要です。
  • 悪性関節リウマチ
    血管に炎症が起こると、重症化して「悪性関節リウマチ」を引き起こします。
    太い血管の炎症では「心筋梗塞」「間質性肺炎」、細い血管では「皮膚潰瘍」「神経炎」などがあります。
  • 慢性腎炎
    リウマチによる強い炎症が長引くと、アミロイド(異常なたんぱく質)が溜まるようになります。腎臓に溜まると、腎不全の原因となります。
  • シェーグレン症候群
    目や口が乾くなど涙や唾液が出にくくなる症状がみられる「シェーグレン症候群」を合併する場合があります。関節リウマチ患者様の約20%にみられ、難病指定されている病気です。

関節リウマチの原因

今のところ、関節リウマチの原因は明確になっていませんが、「免疫異常」によって引き起こされていると考えられています。本来、身体を守る働きをする「免疫」が何らかの理由で異常を来し、関節を守る組織・骨・軟骨など自身の成分を「外敵」とみなして、攻撃して(壊して)いるのです。

免疫異常が起こる要因には「遺伝要因」と「環境要因」があり、それぞれが複雑に関係して発症しているとされます。

免疫異常が起こる要因

  • 遺伝要因
    関節リウマチの発症に関与するとされる遺伝子は、これまでに数十個発見されています。とはいえ、遺伝子があるだけでは発症しません。
    スウェーデンで発表された研究結果によると、親や兄弟姉妹が関節リウマチを患っている場合は、そうでない場合と比べて、発症リスクが約3~4倍高まると報告されています。
  • 環境要因
    遺伝要因と比べると、環境要因の方が発症に大きな影響を与えているとされています。
    喫煙、ウイルスや細菌への感染、過労・ストレス、出産、手術などが発症のきっかけになることがあります。

関節リウマチの発症メカニズム

免疫異常によって、炎症を起こす物質「炎症性サイトカイン」が関節の内側を包む薄い膜「滑膜」に炎症反応を引き起こすことで、痛み・腫れなどの関節症状が現れます。関節内の炎症が進むと、軟骨・骨が破壊されて、次第に関節の変形が起こります。

(図)正常な関節と関節リウマチの関節の比較

関節リウマチの検査・診断

これまでの研究により、関節リウマチの関節破壊は発症早期から進行することが分かっています。レントゲン検査で関節破壊を認めてからの診断・治療では、早期発見とは言えません。当院では「関節エコー」によって、関節破壊が起こる前のリウマチの早期診断に努めています。

関節リウマチの検査

  • 問診・視診・触診
    自覚症状や「いつから症状が続いているのか」などについて、詳しくお伺いします。
  • 血液検査
    関節リウマチでは、患者様の多くで陽性となる「リウマトイド因子(RF:細胞・組織に対する抗体)」「抗CCP抗体(関節リウマチの滑膜に存在する自己抗体)」や、活動性の指標として「CRP」「赤沈(ESR)」、関節破壊との関係があるとされる「MMP-3」などが重要な指標となります。なお、結果は約1週間で分かります。
    ただし、リウマチ患者様の1/5程度は、リウマトイド因子が陰性となるため、「リウマトイド因子が陰性=関節リウマチではない」とは言い切れません。
  • X線検査(レントゲン)
    リウマチによる関節症状の進行度を調べます。
  • 関節超音波検査(関節エコー)
    関節超音波検査では、関節リウマチの初期段階から現れる「滑膜炎(関節内の滑膜の炎症)」の有無を調べます。エコーで関節の腫れ・炎症・滑膜の肥厚を確認できるので、関節破壊が起こる前の早期診断や治療効果の判定に役立ちます。
    (画像)関節超音波検査イメージ
    (画像)当院の関節エコー検査機
  • 尿検査
    関節リウマチが長く続くと、腎機能が低下するため、尿タンパクが出ることがあります。
    そのため、必要に応じて、「尿検査」を行います。

関節リウマチの診断

近年は早期診断を目指し、アメリカリウマチ学会(ACR)/ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)の分類基準が用いられるようになっています。
当院もガイドラインに則り、症状や症状の持続期間(6週間以上)、血液検査・X線検査・超音波検査などの結果から、総合的に診断します。
なお、血液検査で血清リウマトイド因子が陽性の場合でも、あくまで「診断基準の一つを満たす」というだけであり、その結果だけで関節リウマチと診断することはできません。

関節リウマチの治療

関節リウマチでは、「いかに早い段階から治療を開始するか」が重要となります。
関節リウマチの治療は「薬物療法」を基本として、必要に応じて「外科的手術」「リハビリテーション」を組み合わせて進めていきます。近年の薬物療法の進化によって、関節リウマチは症状コントロールの難しい病気から「症状コントロールの可能な病気」に変わっています。
当院では病状だけでなく、お仕事や日々の生活を含め、患者様と一緒に相談しながら治療方針を決めていきます。

関節リウマチ治療の目標

関節リウマチの治療目標は、次のような3つの寛解の維持です。

  • 関節の炎症を抑えて、痛み・腫れを抑える「臨床的寛解」
  • 関節破壊の進行を抑える「構造的寛解」
  • 身体機能を保って、生活の質を改善する「機能的寛解」
(図)関節リウマチの治療目標

薬物治療

「抗リウマチ薬」を基本に、患者様の症例に合わせて様々な種類のお薬を併用して、関節破壊の進行を遅らせます。
※お薬は自己判断によって途中で止めたり減らしたりすることは、大変危険です。副作用や効き方など気になる点がある場合には、医師までお気軽にご相談ください。

  • 抗リウマチ薬
    リウマチ治療の中心となるお薬で、免疫異常の調節や抑制に作用します。ただし、効果が現れるまで通常2~3か月かかるお薬です。また、約20~50%の方に消化器症状・湿疹などの副作用が現れ、中には肝障害・間質性肺炎・腎障害といった重い副作用もみられます。定期的に血液検査・尿検査などを受けながら、服用することが必要です。
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
    症状改善の補助的な薬剤として使用します。痛みに関連する物質を防いで、リウマチの痛みや炎症を軽くする作用があります。
  • 副腎皮質ステロイド
    主に薬物療法の開始時に抗リウマチ薬の補助として併用する場合があります。即効性がありますが、長期使用では生理不順・多汗・不眠のほか、骨粗しょう症・糖尿病などの重い合併症が現れることもあるため、抗リウマチ薬が効き始めたら、通常減薬・中止します。
  • 生物学的製剤(バイオ医薬品)
    主に抗リウマチ薬の効果が不十分なときに使用します。症状の悪化に関与する「炎症性サイトカイン」の働きを抑制して、自分の身体を攻撃している免疫細胞を落ち着かせ、軟骨や骨の破壊が進むのを大きく妨げる作用を持ちます。一方で、感染症にかかりやすくなる、高価である、といったデメリットもあります。
    日本では関節リウマチに用いられるお薬は8種類あり、注射薬・点滴となります。
  • JAK阻害薬
    生物学的製剤と同じように、抗リウマチ薬の効果が不十分な場合に使用する新しいお薬です。炎症性サイトカインの伝達に必要な酵素(JAK)を阻害して、炎症や関節破壊を抑える作用があります。また、同様に免疫機能を下げるので、帯状疱疹、上気道感染、肺炎などの感染症にかかりやすくなる副作用があります。

リハビリテーション

リハビリテーションとは、医師の指示のもと国家資格である理学療法士と一緒に行う治療です。運動やストレッチ、物理療法(電気刺激・マッサージ・温熱など)、補助具(装具療法)を使い、機能回復・改善を目指します。 関節リウマチでは、手の握り開き(手をグーパーする)、指の開き寄せ(指を開いて、くっつける)、手首や足の上げ下げなどの体操で関節を毎日少しずつ動かし、関節の固まりを防ぎます。

手術療法

薬物療法を行っても十分な効果が得られない場合には、外科的手術を検討します。
破壊された関節を人工の関節に入れ替え、関節の働きを戻す「人工関節置換術 ( じんこうかんせつちかんじゅつ)」、首の骨(頚椎:けいつい)に変形が起こり、手足の痺れ・麻痺がみられるときには頚椎を固定するための「関節固定術」、指の腱が断裂した場合には「手指伸筋腱再建術」といった手術があります。
※手術が必要と判断された場合には、適宜対応病院をご紹介します。

よくあるご質問

関節リウマチの治療では、どのくらい通院すればよいのでしょうか?

治療開始当初は2週間に1回の頻度で通院していただきます。治療に慣れてきたら、月1回の通院で進めていきます。また、定期的に血液検査・尿検査なども実施して、患者様に合った治療方針を見つけながら、リウマチのコントロールをしていきます。治療中に気になることやご心配事などありましたら、お気軽にご相談ください。

「手指の第一関節が痛い」「足の親指だけが腫れて痛い」のですが、関節リウマチなのでしょうか?

どちらも関節リウマチではなく、別の病気の可能性があります。
指先の第一関節の痛み・腫れは、「ヘバーデン結節」でよくみられます。関節リウマチで第一関節に症状が現れることが稀にありますが、その場合には第二関節にも同じような炎症が起こり、痛みます。
また、男性で「足の親指の腫れ・痛み」が現れる病気として、「痛風(つうふう)」があります。痛風では、関節リウマチと異なり、他の関節に炎症は起こりません。

関節リウマチと同じような症状の病気はたくさんあります。しっかり鑑別するために、気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

関節リウマチと診断されましたが、日常生活での注意点を教えてください

患者様が関節リウマチに対する正しい知識を持ち、日常生活を管理していくことが大切です。次のようなポイントに注意して、過ごしましょう。

  • 関節に負担がかからないようにする
    関節への負担が続くと、炎症が悪化して関節の変形が進行することがあります。荷物の持ち方や運び方の工夫が必要です。リウマチ体操で、筋力維持・関節機能保持に努めましょう。
    <リウマチ体操>
    手や足の指、手首・足首を中心に、肩・肘・膝などの関節を動かす運動です。
    • グーパー運動
      手や足の指を握ってから(グー)、開きます(パー)。
      (図)足のグーパー運動
    • 膝の曲げ伸ばし運動
      椅子に座りながら、膝を伸ばします。
      (図)膝の曲げ伸ばし運動
  • 規則正しい生活を送る
    風邪を引く、睡眠不足が続くなど身体へのストレスが強い状況では、症状悪化に繋がることがあります。日ごろから、十分な睡眠・適度な運動(肥満防止)・栄養バランスの取れた食事で生活リズムを整えましょう。
  • 基本的な感染予防対策を取る
    関節リウマチ患者様では、病気の進行・治療によって、ウイルス・細菌などの外敵から身を守る自己免疫機能が低下しやすい傾向があります。そのため、うがい・手洗い・マスクの着用・予防接種など基本的な感染予防策に取り組みましょう。

関節リウマチの予防法を教えてください

関節リウマチは免疫異常によって引き起こされている病気ですが、いまだに免疫異常の発生原因が明らかになっていないため、残念ながら確実に発症を防ぐ方法は確立されていません。
しかし、近年の研究によると、発症に喫煙習慣や歯周病菌に対する免疫応答が関連するという報告がなされており、禁煙・定期的な歯磨きなど「お口のケア」が予防策のひとつとして期待されています。

まとめ

これまでの研究から「関節リウマチの症状コントロールには、早期発見・早期治療開始が重要である」と分かっています。ひと昔前までは、症状を緩和させる「対症療法」しかなかったので、関節リウマチは「一生治らない」「将来寝たきりになる病気」というイメージがあるかもしれません。しかし、現在は新しい診断基準に変わり早期発見が容易になった上、抗リウマチ薬や生物学的製剤など新しいお薬の登場によって、「関節破壊の進行抑制」「寛解の維持」を同時に目指せる病気へと変わり、患者様のQOL(生活の質)を高める治療が行えるようになっています。
関節の痛み・腫れ・朝のこわばりなど、「もしかして関節リウマチかな」と思ったら、早めに当院までご相談ください。
また、関節リウマチでは治療が長期間となります。患者様・ご家族様においては根気よく治療していく心構えが必要です。治療中に何か気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。