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疾患

一般整形外科全身

ブロック注射

「ブロック注射」とは、痛みのある部分の神経付近に麻酔薬を注入して、痛みを軽減させる治療法です。首・肩・腰・膝・手足など全身の様々な痛みに有効的です。
「強い痛み」「長引く痛み」は日々の生活に影響を及ぼすだけでなく、新たな痛みを引き起こす「痛みの悪循環」を生み、QOL(生活の質)を低下させます。
ブロック注射では、神経による痛みの伝達を妨げることで、痛みの悪循環を断ち切る効果が期待できます。
痛みでお悩みの方は、お気軽に当院までご相談ください。

痛みの原因とは?

「痛み」は、引き起こす原因によって、大きく3つに分けられます。

  1. 神経障害性疼痛
    外傷(怪我)や病気・手術など様々な要因から「神経」が傷つくことによって、神経の異常興奮が生じる痛みです。外見上の傷・炎症がなくとも痛みがある場合には、この神経障害性疼痛の可能性があります。痛みはビリビリ・ジンジン・チクチク、電気が走ったような痛み、針で刺したような痛みなどと表現されます。
    この痛みに含まれる代表的な疾患には、脊髄損傷・脳卒中などによる神経の損傷・断裂、糖尿病による神経障害、がん細胞の神経浸潤、坐骨神経痛・帯状疱疹後神経痛・ヘルニアによる神経根症があります。
  2. 侵害受容性疼痛
    組織の損傷・炎症から引き起こされる痛みのことです。一般的に、つねる・切る・火傷する・ぶつけるなどが要因となって感知する、いわゆる「普通の痛み」です。私たちの細胞・組織は損傷を受けると、痛みの物質を放出し、この物質が末梢神経にある侵害受容器を刺激することで痛みを感じます。こうした痛みの多くは急性の痛みであり、代表的な疾患には肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)、慢性腰痛(脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア)、腱鞘炎、関節リウマチなどがあります。
  3. 痛覚変調性疼痛(心因性疼痛)
    痛みの原因となる組織損傷や神経障害といった明確な身体的な異常はないにもかかわらず、ストレス・不安など精神的な問題によって起こる痛みです。私たちの体には「痛みを記憶する機能」があるため、長年の痛みや強い痛みで悩んでいる場合には、痛みの原因となる怪我・疾患がなくなっても、「記憶の痛み」によって痛みを生んでしまうことがあります。また、直接的な痛みの記憶だけでなく、病気に対する不安や仕事・家庭での精神的なストレスなども、こうした心因性疼痛の発症要因となります。

痛みの悪循環

痛みが生じると、防衛反応として交感神経が優位になり、血圧上昇・筋肉の緊張などを引き起こします。過度な神経の興奮状態が続くと、次第に血液循環が悪くなり、神経や筋肉への栄養・酸素供給が滞ることで、痛みを生み出す発痛物質が放出されます。また、さらに神経の異常興奮を招くため、より筋肉を硬直させ、痛みを増加させます。
この痛みから再び交感神経の興奮が起こり、筋肉の緊張を生み、血液循環の悪化・発痛物質の放出・筋肉の収縮、痛みの増強といった経過が繰り返される「痛みの悪循環」に繋がります。

(図)痛みの悪循環を断つ「ブロック注射」作用イメージ

このように私たちに備わっている「痛みの記憶」は、痛むことで素早く対処できるといった有益な反応である反面、長引く痛みの我慢によって、痛みの刺激が増幅していき、わずかな刺激でも敏感に感じ取れるようになるため、治りにくくなります。
そのため、慢性痛の痛みの記憶が形成される前に、治療を開始することが大切です。

ブロック注射をおすすめしたい方

以下のような悩みをお持ちの場合、ブロック注射がおすすめです。

  • 早く痛みを取り除きたい
  • 薬を飲んでいるが、気になる痛みが続いている
  • 痛みの悪循環を断ち切りたい
  • 電気治療やストレッチなどをしたが、楽にならない
  • 入院や手術などで長期間休むことが難しい
  • 手術を受けたが、痛み・違和感が残っている

ブロック注射とは?

神経ブロック注射は痛む部位の神経付近、もしくは痛みの原因となっている神経付近に局所麻酔薬を注射して、痛みの感覚を脳に伝達する神経の働きを遮断することで、痛みを軽減させる治療法です。

ブロック注射の効果と安全性リスク

ブロック注射には、2つの重要な効果があります。

  • 痛みの軽減
    麻酔が様々な神経に作用します。自律神経に作用することで血流が良くなり、発痛物質の放出抑制に繋がり、持続していた痛みが緩和されます。また、運動神経の異常興奮を鎮め、筋肉の緊張を和らげ、筋肉由来の痛みも軽減されます。
  • 「痛みの悪循環」を断ち切る
    麻酔薬が神経に作用して、痛みの伝達経路をブロックします。

一方で、ブロック注射の施術には神経損傷や血管注入のリスクがあります。
こうしたリスクをできるだけ回避するため、当院では、超音波ガイド下にて実施しております。針先や薬液の広がりを超音波(エコー)で確認しながら、患者様に合わせて注射を行っています。

ブロック注射の適応疾患

ブロック注射の対象となる代表的な症状・疾患は、次の通りです。

  • 運動器(脊椎や関節など)
    首の痛み、肩の痛み、腰痛、坐骨神経痛、膝の痛み、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、頚椎症性神経根症など
  • 神経痛
    三叉神経痛、帯状疱疹関連痛、肋間神経痛など
  • 頭痛
    片頭痛、緊張性頭痛、群発頭痛など
  • その他
    外傷(怪我)、骨折、関節リウマチ、がんに伴う痛みなど

ブロック注射の費用

ブロック注射による治療には、健康保険が適用されます。ただし、患者様の病態・ブロック注射の種類によって、ご負担いただく費用は異なり、使用する薬剤・その他の検査内容などによっても変動します。

ブロック注射の種類と特徴

ブロック注射にはいくつか種類があり、種類によって期待できる効果や適応疾患が異なります。
当院で取り扱っている代表的な神経ブロック注射は、次の通りです。
なお、ブロック注射は患者様の症状に合わせて選択します。

星状神経節ブロック注射

首の前(喉仏の左右両側)にある星型神経節(交感神経)に対して行うブロック注射です。交感神経の緊張を緩める作用があるため、血流が増加し、頭頚部(頭・首)・腕の痛み・しびれを和らげる効果が期待できます。

【適応疾患】

頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア肩こりむち打ち肩関節周囲炎腱板損傷、頚肩腕症候群、胸郭出口症候群、頭痛、帯状疱疹など

腰部硬膜外ブロック注射

脳から臀部(でんぶ:お尻)まで背骨の中には「脊髄(せきずい:脳から腰の上部まで)」や「馬尾神経(ばびしんけい:腰から下の神経)」と呼ばれる大事な神経が通っています。これら脊髄・馬尾神経を包む膜「硬膜(こうまく)」の外側にある空間を「硬膜外腔(こうまくがいくう)」と呼び、この部分に麻酔薬を注入すると、腰から足までの広い範囲の痛み・しびれを和らげる効果が期待できます。痛みの元となる神経に作用するので治療効果が高く、比較的速効性があります。

【適応疾患】

腰椎椎間板ヘルニア腰部脊柱管狭窄症、ぎっくり腰、腰椎すべり症、坐骨神経痛など

トリガーポイント注射

トリガーポイントは、刺激に対する感受性が高まっている部分、つまり首や肩・腰などで痛みを強く感じる点(ツボ)のことです。痛みを強く感じる点は、筋肉・筋膜が損傷を受けている部分として、硬くなっています。
トリガーポイント注射は、首・肩・背中・腰・四肢の全身の筋肉・筋膜に対する痛みの緩和に効果的です。皮膚の浅い部分に連続して注射することで、徐々に痛みが治まってきます。
ただし、強い神経痛に対しては、あまり効果が期待できません。

【適応疾患】

肩こり、筋・筋膜性疼痛症候群、ぎっくり腰(急性腰痛)など

ハイドロリリース注射(筋膜リリース注射)

ハイドロとは「液体」、リリースは「はがす」という意味です。
ハイドロリリース注射は薬液の注入により、筋膜などの結合組織の癒着をはがし、可動性の悪くなった筋肉の動きの改善を図ることで、痛み・コリ・しびれなどの症状を改善させます。

近年の研究によって、痛みの原因が筋膜上にあることが分かってきました。
超音波エコーで白く肥厚して見える異常な筋膜は、痛みの原因(発痛源)となるだけでなく、伸張性の低下や周囲組織との癒着がよくみられます。
当院のハイドロリリース注射では、超音波エコーで異常な筋膜を確認しながら薬液を注入しています。リハビリテーション治療との相性がよく、組み合わせることにより相乗効果が期待できます。

ほかにも、次のようなブロック注射を取り扱っています。

  • 頚部神経根ブロック
    首・肩の痛み、腕から手指の痛み・しびれに効果的です。
  • 仙骨硬膜外ブロック
    仙骨はお尻の割れ目の少し上の方にあります。お尻・太もも・すね・足の痛み・しびれに効果的です。
  • 副神経ブロック
    副神経は首周りや喉の奥に分布する脳神経のひとつです。
  • 各種末梢神経ブロック
    損傷した神経よりも上位の神経をブロックして、末梢神経の痛みに作用します。ブロックの範囲を最小限に留めることで、副作用を抑えられます。肩甲骨上神経ブロック、肩甲背神経ブロック、腋窩(えきか)神経ブロック、正中(せいちゅう)神経ブロック、大腿(だいたい)神経ブロックなどがあります。

よくある質問

1)ブロック注射は、痛いのでしょうか?

痛みの感じ方には個人差があるため、一概には言えませんが、ブロック注射は「注射」なので、皮膚に針を刺すときの痛みは発生します。ただし、ブロック注射の種類によって、「ほとんど痛みを感じなかった」と言われることの多い注射から、中~強度の痛みを伴う注射まで様々あります。

当院ではできるだけ痛みを軽減させるため、細い注射針を使用したり、選択できるブロック注射の中でも痛みが少ないとされる注射から開始したりするなどの工夫をしています。

2)ブロック注射は何回くらい行う必要がありますか?

患者様によって個人差がありますが、一般的には週1回~2週間に1回の頻度で、2~7回を目安に行うことが多いです。

3)ブロック注射は1回あたり、どのくらい時間がかかりますか?

ブロック注射自体は、数分~数十分で終了します。
しかし、注射の種類によっては副作用の確認のため、院内でご様子を確認させていただいてからのご帰宅となるケースがあります。(血圧の測定や体調の確認のため)

4)ブロック注射の安全性を教えてください

ブロック注射は医療行為であるため、感染・出血・神経障害などの合併症や副作用が起こるリスクを100%完全に防ぐことは難しいのが現状です。ただし、ブロック注射による合併症・副作用の発症頻度は非常に少なく稀です。
当院では高い技術と豊富な知識、経験を持った医師が治療を行っております。

まとめ

ブロック注射は疾患を治す治療ではありませんが、痛みを伝達する神経を局所麻酔でブロックして長引く痛みを取り除く治療法です。首・肩・腰・膝・手足といった全身の痛みに適応できるだけでなく、帯状疱疹・顔面神経麻痺などに対しても有効です。
また、興奮した神経を落ち着かせる作用によって血流が改善されて、収縮していた血管や筋肉へ酸素・栄養素が供給されるので、新たな痛みを起こりにくくして、「痛みの悪循環」を断ち切る効果が期待できます。

「痛みで日常生活に支障を来している」「とにかく痛みをすぐに取り除きたい」など、痛みでお困りの方は、一度お気軽に当院までご相談ください。